今季6度目となるアルカラスとシナーの頂上決戦

この瞬間に向けて、私たちは長い間歩みを進めてきました。

Next Gen ATP ファイナルズでの次世代の有望株としてのタイトル獲得から、この2シーズンでの四大大会制覇に至るまで、すべてが日曜日のこの瞬間へとつながっています。世界ランキング1位カルロス・アルカラスと2位ヤニク・シナーが、トリノのイナルピ・アリーナの Nitto ATP ファイナルズの頂点で初めて顔を合わせます。Nitto ATPファイナルズの決勝戦は、中央ヨーロッパ時間午後6時、東部時間正午に試合開始です。

その支配力を強調するかのように、アルカラスとシナーは土曜日の準決勝で、それぞれオジェアリアシムとアレックス・デミノーを圧倒。落としたゲーム数は、ふたり合わせてわずか13ゲームでした。

アルカラスは、PIF ATP 年末ランキング1位を手にしたシーズンを、自己最多となる9度目のタイトル、そしてシーズン最終戦の初タイトルで締めくくりたいところです。しかし、日曜日の試合が簡単ではないことも分かっています。

「ヤニクとの対戦は本当に楽しみです」とアルカラス。「正直、対戦相手にこだわりはありませんが、彼と対戦できるなら最高です。彼のおかげで、自分も違うアプローチで試合に臨むことができます。彼に勝つため、トーナメントを制するためには、より集中して自分の “プランA” で戦わないといけません。お互い最高のレベルまで引き上げられるはずです。ファンや観客の皆さんにとって素晴らしい試合になると思います」

一方、ロレックス・パリ・マスターズ優勝で1週間だけ世界ランキング1位に返り咲いたシナーは、トリノで10連勝を達成し、インドアコートでの連勝記録を31に伸ばすことで、2年連続となる無敗での優勝を狙います。

ツアーで最も注目されている Lexus ATP Head2Head のデータでは、この決勝戦は、すでにボルグ対マッケンロー、サンプラス対アガシ、フェデラー対ナダル、ジョコビッチ対ナダルといった歴代の偉大なライバルの対戦に匹敵する可能性を示しています。

今季5度の対戦のうち、アルカラスが4勝を手にしていますが、シナーは地元ファンの声援の前でリベンジを果たせれば、オフシーズンをより充実した気分で迎えられるでしょう。

しかし、アルカラスが地元期待の星に一歩でも譲るとは思いません。2025年の ATP ツアーを締めくくるこの決戦は、間違いなく歴史に残る一戦となるはずです。

同シーズンに世界1位同士が対戦した回数

回数 プレーヤー 勝敗
8 ジョコビッチ v フェデラー 5-3 2015
7 マッケンロー v レンドル 6-1 1984
6 ジョコビッチ v ナダル 3-3 2013
6 マッケンロー v コナーズ 6-0 1984
6 ボルグ v コナーズ 6-0 1979
6 アルカラス v シナー 4-1* 2025
* 日曜日が6度目の対戦

24歳のシナーは、2004年にレイトン・ヒューイット(当時23歳)が達成して以来、Nitto ATP ファイナルズで3年連続決勝進出を果たした最年少の選手となりました。今週は40ゲームあったサービスゲームすべてをキープしており、サービスゲームを一度も破られずに決勝へ進んだのは、2018年のノバク・ジョコビッチに次いで2人目です(記録が開始された1991年以降)。シナーが最後にサービスを落としたのは、パリの準々決勝でベン・シェルトンに1度ブレークされたときでした(わずか1度のみ)。

また、シナーはカルロス・アルカラスとの対戦成績で大きく負け越している5勝10敗 の差を少しでも縮めようとしています。以下、2025年シーズンにおける両者の対戦5試合の振り返ります。

勝者 大会名 スコア
アルカラス 全米オープン 62 36 61 64
アルカラス シンシナティ 5-0 ret.
シナー ウィンブルドン 46 64 64 64
アルカラス 全仏オープン 46 67(4) 64 76(3) 76(10-2)
アルカラス ローマ 76(5) 61

デミノーに7-5、6-2で勝利した準決勝後の記者会見で、決勝でアルカラスと対戦する可能性について問われたシナーは、オジェアリアシムへの敬意を示しつつ、アルカラスとの夢の決勝戦について慎重にコメントを述べました。

「まずはここでシーズンを締めくくることができ、また決勝に進めたことを本当にうれしく思います。今年は素晴らしい1年でした。明日の試合を楽しみにしていいます」とシナー。

「こうした試合は、常に楽しみにしています。自分の実力を確かめることができますし、同時にシーズンオフを迎える前に、こうした対戦が実現するのは素晴らしいことです」

屋内ハードコートにおける連勝記録

プレーヤー 連勝数
ジョン・マッケンロー 47 1978-87
ノバク・ジョコビッチ 35 2012-15
ロジャー・フェデラー 33 2004-07
イワン・レンドル 32 1980-83
ヤニク・シナー 30 2023-25
ロジャー・フェデラー 29 2010-12

アルカラスとシナーは、これまでにインドアのハードコートで1度だけ対戦しており、それは両選手の初対戦となった2021年のロレックス・パリ・マスターズで、このときはアルカラスが7-6(1)、7-5で勝利しました。また、アルカラスはハードコートでの対戦でも9試合中7試合に勝っており、直近では全米オープンの決勝で 4 セットの末に勝利しています。

日曜日の試合でも、アルカラスがシナーのファーストサーブにどう対処するか、そしてセカンドサーブに対してどれだけ積極的に攻められるかが、勝負の鍵になるでしょう。

シナーが自分の強みを最大限に発揮する形になれば、ライバルであるアルカラスに対して “ファーストストライク・テニス(先制攻撃型のテニス)” での展開になるでしょう。TDI Insights のデータによると、シナーは今シーズン、全選手を対象とした統計で0〜4本以内のラリーで 57% のポイントを獲得しており、アルカラスの 53% を大きく上回っています。また、9本以上の長いラリーでも、シナーがわずかに優勢という結果が出ています。

一方、アルカラスが最も得意とするのは5〜8本のラリーで、今季、全ての対戦相手に対して57%のポイントを獲得。これに対しシナーは54%です。

また、勝利数では、アルカラスは2023年の自己最多記録である65勝、6タイトルを上回り、今季は 71 勝をマーク。これはシナー(57勝)、デミノー(56勝)、ズベレフ(55勝)を大きく引き離す数字です。

2025年のツアー最多勝利数

カルロス・アルカラス 71
ヤニク・シナー 57
アレックス・デミノー 56
アレクサンダー・ズベレフ 55
テーラー・フリッツ 53

アルカラスは、2016年のアンディ・マレー以来となるシーズン9勝目を目指します。当時、マレーは年末ランキング1位を懸けた Nitto ATPファイナルズの決勝戦でノバク・ジョコビッチを破り、タイトルを手にしました。

準決勝でオジェアリアシムを6-2、6-4で下したアルカラスは、1998年のアレックス・コレチャ以来、3人目となるスペイン勢の優勝を目指します(1976年にマヌエル・オランテスが優勝)。

ソールズベリーは3度目の Nitto ATP ファイナルズ制覇を狙う

ダブルスの決勝(現地午後3時/米東部時間午前9時)では、ジョー・ソールズベリーが、同大会での14連勝の勢いで、ニール・スクプスキと共に、ハリ・ヘリオバーラ/ヘンリー・パッテン組と対戦します。

ソールズベリーはラジーブ・ラムとのペアで2022 年、2023年にトリノで優勝しましたが、昨年は大会に出場していませんでした。スクプスキは、初のシーズン最終戦の決勝進出です。

ソールズベリー/スクプスキ組は、今季、46勝21敗の成績を残しており、ペアとしては今シーズン初めてのタイトル獲得を目指します。両選手は今季、全仏オープンと全米オープンで決勝に進出。土曜日の準決勝では、PIF ATP 年末ダブルスランキングで1位を獲得したジュリアン・キャッシュ/ロイド・グラスプール組を6-7(3)、6-3、10-8で破りました。

一方、昨年、今大会に初出場を果たし、準決勝で敗退したヘリオバーラ/パッテン組は、今大会の準決勝でシモーネ・ボレリ/アンドレア・ババソリ組に6-4、6-3で勝利し、決勝に進みました。

36歳のヘリオバーラ(フィンランド)と29歳のパッテン(イギリス)は、日曜日の決勝で、ペアとしてツアー8度目のタイトル、そしてインドアコートでの今季2度目のタイトルを狙います。両選手は今月、ロレックス・パリ・マスターズでも優勝しており、勢いに乗っています。

- この記事のリサーチは Jon Jeraj が担当しました